2004年 9月号

 

 一、オーナー社長が新しい時代をつくる

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 前回の通信ではコンピュータシステムの再構築について書きました。今月の日経コンピュータに「大手の会社では全面的な再構築は、資金もノウハウもないのでできない。それで中間的な方法で、大型コンピュータ(基幹システム)でデータを出し、それをオープン系システム(パソコン)という方法で処理している」と書いてありました。この方法はリミットが五年前、オフコンデータをパソコンで加工するシステムを構築し、インターネットビジネスソフト開発を始めたものと同等です。この記事によってリミットがインターネットビジネスソフトでNECから最優秀を頂いた本当の意味が初めて解りました。リミットは最低でも大手の会社よりも五年は先を考えていたのです。記事になった企業はリミットより七年遅れています。

 雇われ社長は、大型コンピュータをこれから五年、十年と稼働させることが経費の節約になるといっています。目の先の利益を追求し、次の社長のことは考えていません。投資の先送りです。最後は時代遅れの会社となり行き詰まります。リミットは同族経営ですので利益が出なくても退陣に追い込まれることはありません。次の世代が行動を起こせるように私の責任で変える努力をしています。この時代は、全財産と自らの存在をかけて経営しているオーナー社長でないと新しい時代の流れを作れないと痛切に感じます。

 

 二、十八年ぶりの夢実現

 

 リミットは国内生産を十パーセントとしています。生産工賃は一商品あたり平均一千七百円かかっています。仮にこの十パーセントの生産をすべて中国生産に切り替えると、年間三千万円の利益がでます。納期を厳守するための国内生産ですが、大変な赤字によって成り立っています。これに対して、新たに立ち上げた高級婦人衣料は国内生産でも赤字にならないよう、付加価値の高い商品を目指して開発してきました。

 今年四月、高級婦人衣料縫製工程を担わせるために高校新卒者を採用して福山の企画研究所で技術養成をしています。さらに来春採用のために早くから人材を募集する行動をとっています。

 私は福山の日本生命ビルに新たな部屋を借りて工場を作れば、喜んできてくれると言いました。そしてその方針で進んでいましたが、先日突然、専務が新市工場を充実して生産をすると言い始めました。私は「頭脳の時代」到来を予感して、新市から福山に出て、ある程度の結果を出しました。そんな私としては、専務がなぜ新市に帰ると言うのか理解できませんでした。

 私はあらためて新市に行って、工場の表通りより工場を眺めてみました。新市工場は十八年前、最初のコンピュータ裁断を入れたときに建てました。奥に倉庫配送センターがあり、ここで生産ができれば生産配送の流れが短縮できて理想的な工場になります。また、建築士に「工場らしくない工場で、中に入ってみたら工場と解る建物が欲しい」と頼みました。表通りに面してショーウインドーがあります。夜は玄関とともにライトアップしています。入り口の看板に「リミット工房、配送センター」とピンク色の看板が上がっています。玄関は植木もあり大変おしゃれだと思います。立派な工場を十八年前に作っていたものです。ところが私は工場に対しては、長年人材で苦労した惨めな経験しか頭に残っていません。立派な工場がありながら中国山脈を越えて日本海側の出雲まで逃げ、最後は中国まで逃げました。生産に関しては逃げの人生でした。立派な工場がありながら生かすことができなかったのです。

 専務にはそんな苦労の経験はありません。素直な目で見て、新市で高級婦人衣料を生産する考えになったと思います。私は高級婦人衣料の製造を福山の日本生命ビルですると当初より決めていました。しかし専務のリミット発祥の地、新市で生産する考えに対して、過去の経験を捨てる時代だと認識すると、私の考えが間違っているのではないかと思うようになりました。「工場らしくない工場を」の夢の達成には大変遠回りをしましたが、リミット発祥の地の原点に十八年ぶりに帰り、本格的に生産します。私にできなかった夢を、専務が実現してくれれば大変うれしいと思っています。

 

 三、売れる理由、生き残る理由

 

 今年の夏通信販売で、開襟で素材は絹で、小紋の型紙を使って紺で染めてあるシャツが衝動的に欲しくなり、三万二千円で買いました。納期は受注生産で、遅れる場合もあると書いてありました。買って商品を見たとき、何でこんなに高くても買うのだろうかと考えました。生地を一万円と見て、縫製工賃が二千円(一日三万円稼げます)で二万円の利益になります。繊維製品を販売しているだけに考えてしまいました。また、先日は百円ショップでナイロンの健康タオルと肌着のランニングシャツを買いました。ランニングシャツは一回洗濯したら延びてしまい捨てました。使い捨ては資源の無駄です。

 環境破壊を考えれば長持ちをする商品を買って大事に使う時代が来たと思います。しかし消費者が大事にして長持ちをさせれば売上が落ちてきます。今後は生産を継続的に落としていくことを考えなくてはなりません。売上が落ちても給料を払えるには、利幅が大きくなくては払えません。生産原価の二倍、三倍、五倍で売れる商品を開発しなくてはなりません。私の時代は経済拡張の量産時代でした。若い世代は人口減少、経済縮小の時代です。このことを忘れて行動すれば、十年先は行き詰まります。振り返って考えると、現在の日本は明治維新、第二次世界大戦に次ぐ三度目の大きな時代の転換期だと思います。バブル崩壊から十三年、この間が最も重要な時間だったと思います。この間に時代の変化を読み、次の時代を切り開くためにさまざまな事にチャレンジした人は、自己研鑽の十三年という非常に貴重な時間を過ごしたことになります。これから本格的に日本経済が大転換しても生き残って行くことができると思います。その一方で、バブル崩壊後十三年を無為に過ごしてしまった人にとっては、厳しい現実になると思います。仕事も財産もすべて失い、無一文になってしまう人が多数出てくることと思います。

 リミットは売上が落ち、新しいことにチャレンジし、新しい体制を作る努力をした結果、新しい道に行動起こすことができました。このことは人間の知恵だけではなく、神仏のお導きのおかげと思い、深く感謝しています。

 

  2004年9月25日

 

    笑顔着

      リミット株式会社

      代表取締役 有 木 伸 宏

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