2004年 8月号
一、決断は早朝に、即実行
いつも大変お世話になりありがとうございます。
八月は閑散期です。しかしリミットは次世代の体制作りに大切な時を迎え繁忙期です。
前回のリミット通信で説明しましたように、コンピュータシステムの再構築への六千万円の投資は大変な負担です。現金で払うか、リースにするか。リースにすれば資金は楽です。この度は特別償却を利用するため、現金を払うことにしました。私の哲学では、同じ道が二つあるならば苦しい方の道を選ぶことを基本としています。よって苦しい道である現金での支払いを選択したのです。
私は、大きな決断をする秋は誰にも相談しません。会社の運命をかけるような決断は社長にしかできないからです。これができないなら社長は失格です。最近二回ほど非常事態宣言をリミット通信に書きました。非常事態宣言も誰にも相談せず決断しました。
決断するのは朝二時から四時の間です。意識が寝ているようで起きているような無意識状態の時に問題解決の物語が始まります。夜は考えず明日朝必ず解決策が出てくると自身に言い聞かせて安心して休みます。やがて解決策が夢に現れてきます。すぐ起きて書きとめます。どんなに苦しいときでも、短時間であっても安心して熟睡できたことが、体の弱い私がノイローゼにならず、どん底から立ち上がれた理由だと思っています。
私はどん底時代から現在まで、この朝の決断を素直に行動して来ました。何事も考えるだけでは結果が出ません。決断を実行して問題があれば修正すればよいのです。行動を先延ばしにするより、実行する方がプラスです。
この度の件も現金を払える可能性がないなら、迷うことなくリースにしたでしょう。五分五分だから迷うのです。リミットの支払方法を手形から現金に変えたのも、売上が落ちている時期でした。そのような時期に、現金への切り替えは常識ではできません。夢の中で「現金が不足すれば銀行にお願いに行けばよい、支払手形が借入金に変わるだけで負債総額は変わらない、これなら金融機関も理解していただけるのではないか」と簡単な夢物語になったのです。
私は夢で考える人。専務は行動する人。常務は数字を組み立てる人。大変よい組み合わせです。
二、無借金経営に挑戦
現在、リミット通販㈱は高級婦人衣料の販売を目標にしています。しかし、ここまで来る過程は紆余曲折大変な道でした。作業服の産地で高級婦人衣料の縫製販売は参考にする会社がありません。このような条件の中で高級婦人衣料を目指すことは常識はずれです。何度も方針を変更し、多くの運にも恵まれ、ようやく製品ができあがり、カタログ撮影が始まりました。九月より販売いたします。
縫製段階では、裁断はハサミですることを考えていました。しかし専務から、現在のコンピュータ裁断はリースも終わり、いつ壊れるか解らない状況だから新しい機種に変えたらいいと意見が出ました。そして延反機も生地を延ばすことなく自然におろし、並べる素晴らしい機種ができているそうです。コンピュータ裁断機の価格も半分以下になっています。
リミットがコンピュータ裁断を入れたのは十五年も前のことです。東レのシステム会社から第一号機を五千万円即決で買いました。当時、多品種少量生産で裁断に行き詰まっていました。コンピュータ裁断機を買った後、木造の工場にはコンピュータ裁断機が入らないことが解り、土地と工場建築に八千万円、合計一億三千万円。リミットの運命をかけました。その上、コンピュータシステムにも投資していました。大変な投資をし、年間償却五千万円が四年続きました。償却金額が大きくて資本蓄積はできませんでした。しかし十五年間築いたノウハウは、インターネットのビジネスソフトで最優秀を頂くという結果が出ています。再度の大きな投資は今までの経験から迷いはありません。必ずそれ以上のプラスを出します。そして新しい時代に対応した少人数で、大きな仕事の体制をつくり、無借金経営に向かって行動します。
三、大きい日中情報システム(株)の存在
この度のコンピュータシステム再構築とコンピュータ裁断の入れ替えでは、どちらが迷ったかと云えば再構築です。現時点ではシステムは何の問題も起こさず稼働しているからです。しかし先送りを続ければそれだけ、先での投資金額が増えます。そしてインターネットビジネス時代への対応が遅れます。今回決断したのは、日中情報システム㈱の存在が大きく起因しています。システムソフト作成の子会社、日中情報システム㈱は日本側も中国側も経験が浅く、作成できる範囲が限られています。よって五月に外部からの注文オーダーがなくなりました。その時、リミットの情報システムを再構築すれば、約二年間は仕事があると考え、情報の責任者に話しましたが、実はあまり期待をしていませんでした。リミットの再構築は難易度が高く、彼らには荷が重く思われたからです。ところが、「やります」と潔い返事が返ってきたのです。
私の哲学は経験が浅い人ほど自信を持ち、経験が深い人ほど不安を持つ、ということです。責任者が情報システムの奥の深さや怖さを知らないから、簡単に受けていると思いました。他社の仕事なら迷惑をかけて信用問題になります。しかしリミットは現在のシステムが順調に稼働しているので、勉強しながらシステムを作り、完成が遅れても問題はありません。再構築で勉強して完成した時、大きく進歩していると考え、スタートしました。オーダーがなくなったマイナスを、プラスに変える方法を考えた時、再構築の決断ができたのです。私が長年かかって構築したコンピュータシステムとコンピュータ裁断が、新しい時代に対応したシステムに生まれ変わります。そして私の時代の女子作業服は中国に移り、国内生産は高級婦人衣料へと全て若い世代の流れに切り替わります。
四、迷いなく
年齢と共に迷い無く、瞬時に決断できるようになりました。それは絶えず決断する訓練をしてきたからです。特別の訓練ではありません。レストランで食事を選ぶとき、ネクタイを選ぶ時、服を選ぶ時、何事も全体を見て瞬時に決める訓練をすればよいのです。その訓練の積み重ねで大きな決断ができるようになります。現代は過去を切り捨てなさいと言われています。過去の流れを全て壊しゼロにする努力をする人と、守る努力をする人とでは、戦後最大の転換期だけに後を引き継ぐ若い世代の運命が大きく変わると思います。
2004年8月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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