2004年 5月号
1、激変する時代の投資の方向
いつも大変お世話になりありがとうございます。
今年の夏物は順調に売れています。売上は昨年比10パーセント増が予測されます。振り返ると、昔のリミットは納期遅れでお叱りの連続でした。私は「来年は必ず解決します」と言い続けました。お客様からは「昨年もそのように言ったではないか、嘘つきだ、信用ならん」と言われ続けました。資金がないので在庫が積めない、その中で納期を間に合わすのは大変な努力でした。その結果として素晴らしい生産管理システムができました。
昨夏、必ず売れる定番商品の生産が追いつかないので原因を聞くと、一度に縫製して積めば資金が必要になるので分けて縫製をしていたのです。原因は、私が長年、在庫資金は限りなく少なくそして販売は限りなく大きくと言い続けたことでした。資金も少し余裕があるので一時的な在庫は増やしてもよいと言いましたところ、5,000万円を一時的に増やして欲しいと申してきました。これで工場も同じ品番を一度に縫製ができるし、受注日出荷率も向上できると言うので許可しました。その結果、今年の夏物出荷は順調です。ここまで来るのに長い年月を費やしました。よく我慢してついてきていただいたと販売店の皆様には感謝しています。
リミットは他社メーカーが順調に業績を上げ利益も出しておられるときに、頭脳分野の充実に大変な投資を続けたので業績はよくありませんでした。しかしその状況のもとで手形を廃止しました。今年はコンピュータシステムの再構築のために大きな資金を使い続けています。それはなぜか。世界の激変ぶりに怖さを感じるからです。カメラは突然、デジタルカメラに変わりフィルムは必要なくなりました。成長産業が瞬時に衰退産業に変わります。これからも大きな投資を続け、激変する時代に適応させながら高い利益の確保に努力しなくてはなりません。このように考えると、価格競争では先行投資はできません。価格維持を貫いても、買って頂ける商品開発に努力しなくてはならないと思います。
2、無借金経営へ、専務の宣言
先月、業界新聞に専務の話として「リミットを5、6年先には無借金にする」と出ました。私は大変びっくりしました。
生地も3月と9月は発注して染め上がっている生地は全て引き取り、現金を支払います。既に手形決済を廃止したので私は、今後は借入金の返済を目標にするとは言っていました。専務はそれを期限まで明確に言いました。今までは取材は全て私が受けていました。専務はこの度が初めてで、そこでこんな宣言するのは大変なことです。私は昔から今年の方針をリミット通信に書き、いつも苦しい立場に自分を追い込んできました。言った後、言わなければこんな苦しい目に合わなくてもすむと思うこともあります。それでもリミット通信に書きました。時にはこんなことまで書いて、皆に知られなくてもよいのではないかと言われるようなことも書きました。非常事態を何度もリミット通信で「宣言」しました。言ったり書いたりすると大変精神的に圧力がかかり、すぐ行動を起こします。私は、社内で行動を明言しない経営者は卑怯だと思っています。
たばこを止めるには、多くの人に宣言すると止められると言われています。自分ひとりで決めた人は絶対に禁煙できないそうです。専務は社内だけではなく、メディア上で業界に宣言したのです。これで結果が出ないとただのほら吹きとなり、相手にされなくなります。私ならこれから無借金経営になるように努力しますと言ったと思います。
期限まで決めて言ったので専務にとっては大変なことになりました。専務は行動を起こしています。
3、再び同族経営のメリットについて
前にもリミット通信で同族経営方式について書きましたが、改めて基本の説明をします。役員報酬は法人所得税より安くなる金額で決めます。特に所得の少ないうちは会社の利益を限りなくゼロまたは少し赤字にして、役員報酬で取ってしまうことが一番の節税になります。中小企業は役員報酬を目いっぱい取って、会社の利益を限りなくゼロにして社長名義の預金通帳に合法的資金を貯めます。これを会社に貸し付けます。自己資本比率30パーセント以上、目標は個人貸付金と自己資本をプラスして修正自己資本比率として計算します。
リミットは平成9年頃、株式上場を目指していた経営から、同族経営方式に転換しました。行動を起こして7年になります。個人の定期は徐々に解約し、現在では私夫婦と専務夫婦は銀行預金を一切していません。全て会社に貸しています。同族経営方式の本を何回も読みながら、5年計画で同族以外の株式はすべて買い取りました。会社は赤字にならない程度にし、配当金を受け取ると税金二重払いになるのでゼロです。赤字を出さない程度に利益を圧縮し、会社が手形を廃止しその上、5、6年先は無借金にすると宣言したのです。利益を出していない会社が無借金にすると言えば理解されないと思います。
毎年、銀行や取引商社には決算書を送っています。リミットは節税をしても加算税を取られるような脱税は決してしていません。そこで今年から信用調査会社の調査には応じないことを決定しました。世の中がこれほど個人情報を大切にしているときに上場会社でもないのに、しかも誰が調査依頼したかもわからないところに大事な情報とノウハウを流出させる必要はないと判断いたしました。もし必要ならば直接情報を取りに来るべきだと私は思います。
4、奇跡は人間の知恵から
リミットは平成10年、2億9,000万円あった支払手形残を平成14年にゼロにしています。その間売上は20パーセント落ちています。常識で考えれば理解できません。今から考えると、同族経営方式と長年努力した頭脳分野のノウハウそして私自身が中国に通い続け、行き詰まりながら道を開いた中国総経理の協力のおかげだと思います。今は中国には1年に1回、奇跡的に道が開けた9年前の12月12日を記念日として総経理家族と食事に行きます。長男夫婦、娘夫婦の4人は日本の大学等で4年から6年勉強して帰っているので言葉で困ることはありません。このことも総経理の子供を日本で勉強させると決断し、いっしょに連れて帰り育てた結果です。そして決断して行動を起こしたことだけでなく、人間の知恵では考えられない多くの奇跡が起きたからです。しかし行動を起こさなければ、神仏は奇跡を与え助けることはできません。全て決断即行動を起こしたから与えられたのだと思っています。
なぜ手形をゼロにできたか、そして無借金に向かって行動を起こしているのか。そこだけが私自身も理解できません。
2004年5月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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