2004年 3月号
1、重大な決断への啓示
いつも大変お世話になりありがとうございます。
平成16年3月15日午前2時50分頃夢の中で、まるで何かの啓示のように、猛烈に感じることがあり飛び起きました。常務より送られた資料を再度見直し、熟慮の結果、大きな決断をして「非常事態宣言」と社内ネットに書きました。リミットの月次決算書は絶対に毎月翌月の3営業日にできています。顧問会計事務所からの正式な決算書ができるのは、3月15日の確定申告と前後し、3月末になります。そこで社内で作ったいわば仮の決算書と今期の営業報告と次期の営業方針を2月中頃には銀行や商社等に示します。しかし、今年は方針に大きな迷いがあり、結論が出ないまま3月初めに社内決算書を送りました。何を迷い、何を考えていたかをこれから記しますので、皆様にも考えていただきたいのです。
2、中国での多品種少量生産の意味
中国に進出して以来リミットは、通常見られる単品大量生産でなく、多品種少量生産に努力しました。これは大変困難な道です。困難な道を歩まないと差別化はできません。その上販売店に喜んで頂くには、必要な時に必要な商品を間違いなく納めることが重要になります。受注日即出荷率の向上をめざすには常識的には短納品ができる国内生産が必要です。国内生産が月産10,000枚の時は生産計画も楽でした。販売不振となり売上が減少する中で利益を上げるには生産コストを下げなくてはなりません。国内生産を月産8,000枚、6,000枚と落とす中で、いつも「これ以上国内生産を落とすと納期に大混乱を起します」と社員の精神的な抵抗が起きました。それでも私は、1,000枚国内生産を落として中国生産すれば、1,000万円利益が出ると叫び続けました。
社員は誰しも困難な道を進んでお客様に怒られるより、安全な道を歩むことを求めます。その抵抗を抑えて行動を起こさせるには強力なリードが必要です。最高責任者の命令ですが、リミットのように小さい会社でも浸透するには大変でした。大きい会社ではできないと思います。その上多品種少量生産は中国にとっても大変なことです。中国もこの大変な道に挑戦していく協力がなければ結果が出ません。この困難に挑戦することを理解させることが大変でした。現在国内生産は月産2,000枚まで落としています。しかし受注日即日出荷率は80パーセントを超えています。これは長年のコンピュータシステムと管理システムのノウハウの結果です。そしてそれを使いこなす人材育成の結集です。
現在国内生産は年間では20,000枚の生産で、経費が3,500万円かかっています。コンピュータ裁断システムは償却済みでパートの女性社員が操作しています。型入れ指図など全て福山の企画より社内ネットワークで送りますので、生産経費はありません。多品種少量生産ですので1枚から縫製しています。工場の電気代等の固定費は、月産10,000枚生産時も月産2,000枚生産時でも大きな変化はありません。だから私は生産経費を見て月産2,000枚を1,000枚に落とせば、1,000万円の経費が落ちると考え続けていました。
3、「リミット」の精神を問い直す
そのようなとき下記のような本を読みました。
「損をすることでは、貧乏にならない。損を隠すことで、貧乏になる。損をするだけでは、決して貧乏にはなりません。損をしても、金運を失ったり、減らしたりしたことにはなりません。損したことを隠した時、金運をなくすのです。損は損でいいから、隠さないことです。バブル時の会社の不正経理は『利益隠し』でしたが、今は損をいかに隠すかの時代です。ディーラーがディーリング失敗の穴を埋めるために、どんどん危険な賭けをして、会社本体もつぶしてしまうことがあります。これも損を隠していたことが原因です。これだけ損をしたということをオープンにしていれば、被害はそれ以上広がりません。プライドの高い人は、自分のミスをオープンにできません。会社経営で社長がミスをすることもあります。それを隠そうとするから、被害が大きくなるのです。「損」イコール「金運のマイナス」ではありません。優等生が金運を失いやすいのは、エリートとしてのプライドが高いからです。優等生のイメージを守るために、だまされたり損をしたりしたことを人に言えません。身近な仲間に協力を求めたり、SOSを出したりすることができないのです。そして見ず知らずの街金に手をだしてカモにされてしまうのです。」
リミットは廃番商品で生地さえあれば1枚でも縫製して納めています。これは販売店には喜ばれると思います。その一方でリミットには大変な損が発生しています。お客様は神様であっても、そのためにリミットが損ばかりして倒産したら馬鹿です。倒産すると信頼には応えることができません。信頼と利益、その接点を考えることがリミット(極限、接点)の精神です。
4、廃番への決断
そこで生産の原点にさかのぼり、今までの販売方針を資料を見て再検討しました。
年間売上100枚以下 販売比率 4.4% 在庫1年分 品番比率15%
年間売上50枚以下 販売比率 2.1% 在庫2年分 品番比率23%
年間売上(月間売上ではありません)100枚以下を廃番にすれば、品番総数で717品番が272品番減少して445品番になります。100枚以下を順次廃番にすることを考えました。6.5%の売上は他の商品に切り替えてもらいます。廃番在庫は約5,000万円あります。これは2年で償却します。私は販売利益ではなく、生産の合理化で償却できると思っています。リミットの社員は、経営に必要な資料は何でも出してくれます。私は資料をみてびっくりしました。生産枚数でなくその基の販売方針を変えなくてはならないことに気がつきました。枝葉の生産方法のみを追求し、基になる販売方針を忘れていました。お客様は神様とサービスのみを追求して大局に立てない単なるご用聞きとなり、1枚でも縫製した結果、気がついてみればリミットが大変な事態になっていたのです。ノーと言えるリミットから、イエスというリミットに変わっていました。この状況にたいして私は年間売上50枚以下から廃番にするように非常事態宣言を決断したのです。
前出の『損をすることでは、貧乏にならない。損を隠すことで、貧乏になる。』を実行して損を公表します。今後はお客様の理解を得ることと5,000万円の在庫の償却です。リミットは行動を起こします。リミットも大きな痛手を伴います。販売店の皆様にも大変ご迷惑をおかけします。ご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
2004年3月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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