2003年 10月号
1、ブランド力構築と中国の役割
いつも大変お世話になりありがとうございます。
10月も販売は順調に推移しています。リミットはブランドの構築に全力で努力しています。それには中国工場の協力がなくてはできません。私はリミットの生死を握っているのは中国だと思っています。そのことを前提にして主導権をリミットがもつには何が最も大切か考え行動しています。
私は昨年の9月から中国に送った手紙に番号を付けています。A4用紙で2枚から3枚をこれまでに87通送っています。日本で教育を終えた子供が4人いますので総経理に対しての通訳は困りません。私は日本人に出す手紙と同じように書いています。経済用語も理解するようになり、理解が深まってきたと感じています。文化の違いを埋めることは大変です。出した手紙に対して返事はほとんどなく、私が一方的に出し続けています。日本語を読んで理解しても、中国人が日本語で返事を書くことは大変だと思います。ファクス又はメールで、手紙を受け取ったとだけでも返信するように何度も教え、最近ようやく簡単な返事が来るようになりました。だんだん理解してきたなと思える行動が増えてきました。
日本の会社でも経営理念は絶えず言い続けなくては社員に浸透しません。ましてや文化の違う中国に対しては大変な努力をすることが当然です。最近中国の総経理に出した3ページの手紙の要約を掲載します。
2、中国新工場建設へのメッセージ
『今最も努力していることはブランドの構築です。ブランドとは、一流、トップ、高級などの印象を持たれている商標です。リミットは女性の働く分野での衣料はトップブランドであることを定着させたいと思っています。ブランドを定着させるには、リミットと青島伸栄服装公司とが一体となって行動を起こさなくては絶対にできません。青島伸栄服装公司に求められるのは、品質の向上と正確な納期管理です。このことは今までも努力してもらっています。私は検査の基準を設定して、縫製工程の中での検査が大事と思っています。商品が仕上がっての検査は修正が困難です。多くの日本の会社は、修正工場で検査しています。これは縫製を知らない人の考えです。縫製の途中での検査は修正が簡単です。仕上がり商品の修正はできません。このことは総経理もよく知っているでしょう。
しかしいくら工場が努力しても、リミットの企画、販売方針が間違っていればブランド構築はできません。ブランド構築で高品質の維持と同様に重要なことは価格維持です。全てのお客様に、同じ価格で売ることが大切です。ユニフォームの業界は猛烈な価格競争で価格を安くしてきました。そのような状況の中で、リミットは1990年より価格維持を厳守してきました。営業は心理学です。他社より高く買った販売店は面白くないので、商品を買うときはいつも値引き交渉をします。そうなると、リミットにも交渉をする人を置かなくてはなりません。リミットは絶対に値引きをしませんので交渉する人もいりません。リミットには他社にない独自商品が多いのでユーザーは他社での購入は不可能です。これが企画に努力した会社と他社と同じような商品を作っている会社との違いです。値引きしないなら取引をやめると言って取引をやめた販売店はありません。
精密機械などの業界では好況が続いています。価格競争はありません。メーカーが決めた価格で世界に輸出しています。日本の機械を使わないと製品ができないものが多くあります。しかし、人海戦術でつくる商品は中国に完全に負けています。中国も人件費は徐々に上がっています。人件費の安さのみで競争してきた商品はだんだんと利益が出なくなります。リミットは20年間企画力のアップを目指し、その結果が今出てきました。それで価格維持ができているのです。この観点から、陳君、チーちゃん(総経理の娘と日本の大学で知り合った主人)の国内販売という将来の目標は自然と見えてきます。リミットは今後大量商品には向かっていきません。大事に商品を作って、大切に販売して、確実に利益が出るような企画を重視した商品を販売します。
この度青島に行ったときに、総経理が縫製は徐々に奥地に行かなくては人が集まらないと言っていました。これは少しちがいます。今後の方針として奥地に逃げるのではなく、今の場所で人件費が上がっても、価格を上げることができる商品を作るのです。新築工場の建築はこの考えによらなければなりません。夏は工場内温度が38度になるので冷房設置も考えなくてはなりません。リミットの累積赤字の後始末が今年で終わる見通しです。少ない人員で大きな仕事ができる体制ができたことで黒字になりました。そして総経理の子供2人、計夫婦4人の日本での教育が終わって中国に帰り、工場管理、企画、情報システム、財務会計士と強固な体制ができたことです。縫製は人海戦術ですが管理部門は、コンピュータで合理化がいくらでもできます。このことはチェン君(総経理の長男、情報システムを勉強)と陳君(娘婿夫婦で工場)の連携で工場管理の改善に努力して欲しいと思います。
日本では、お人好しで人情家の経営者が高く評価された時代もありました。松下幸之助の経営哲学(総経理は中国版を読んでいます)は、社員の解雇をしないのが哲学でした。それを守った松下は最悪の会社に落ちてしまいました。昔は中国との取引はありませんでした。その時代の経営環境と今では違います。経営戦略はその時代を考えて変化させなくてはなりません。経営者は絶えず将来に起きることを予測し行動を起こさなくてはなりません。結果がわかったときは手遅れです。この度の売上げ減で人員整理に躊躇していたら、リミットの回復はなかったでしょう。
しかし、人員整理して営業に大混乱が起きたら大変です。リミットは25年間限りなく人間の仕事をコンピュータ化して人間は判断業務のみを考え、その限界に挑戦してきました。その結果が今年出たのです。
青島伸栄服装公司は規模の大きさではなく、コンピュータで合理化して少ない社員で大きな仕事、そして縫製部門は、大量生産ではなく、多品種少量生産で品質は最高である。社員の給料は他社より上である。工場環境も大変よい。このようなことが実現できるように、リミットブランドの構築に努力し価格維持します。そしてリミット㈱と青島伸栄服装公司の社員がお互いに幸せになるように努力します。』
以上が、中国新工場と生産に関する指針を明らかにした手紙です。皆さんはどう読まれましたか。
2003年10月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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