2003年 9月号

 

 1、夏物続伸で秋冬物生産に影響

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 秋冬物商戦は最盛期です。現状では順調な売上です。

 一方厳しい残暑で夏物の注文が続き、秋冬物の生産に影響を与えています。これを避けるため夏物受注中止の意見もありましたが、リミットは注文があれば必ず納めることを社是としているので、可能な限り受注するとの結論に達しました。今年の夏物生産計画は、前年比10パーセント減として設定していたので、20パーセントの生産アップは大変でした。このために冬物生産が遅れています。

 冬物の生産は夏物と違って期間が長いので、同じ品番を一度に縫製をせず、必要な数量で止めて他の品番を縫製することで遅れを回避します。工場の生産効率は落ちますが、商品を間に合わすためには仕方ないと思っています。今秋冬生産は中国工場に生産アップを要請しました。中国から工場内の温度が38度になり、とても残業できる状態ではないと連絡がありましたが、結果として、納期を守りながら生産に協力してくれました。

 

 2、中国新工場建設にめど

 

 8月に中国に行きました。最近は総経理が来日していたので同行の副社長の訪中は久しぶりでした。

 8年前に工場を設立したときは、古い建物を借り700万円をかけ補修、200人でスタートしました。2年前雨漏りもするようになり工場新築が必要となってきました。

 総経理の計画は必要用地の倍を買い、近い将来半分を売れば土地代すべてが賄えるというものです。これは日本のバブル時代の考え方と同じです。日本の経験からそのプランが大変危険であると必死に説明しましたが、理解させることが困難でした。総経理と感情的すれ違いすら起きました。私の「土地は借りる」という考えを理解させるために、日本のバブル期からの流れを説明したファクスを送り続けました。

 私は日本の繊維業界は中国に移転して不況となり、投資が大変困難な状況だということを説明しました。しかし、中国の役所は土地を日本の会社に買わせるように指導するので、総経理がそれに逆らうことは困難でした。資金が少なく工場ができる方法を考えるように総経理に連絡を続けました。

 ところが、この度の訪中で、200人規模の工場を役所が建て、その借賃が年間15万元(240万円)との話がありました。窓やドア、寄宿舎、給食設備等の内部設備には30万元(450万円)で済みます。私は金額の低さにびっくりしました。総経理に「最高50万元予定したら大丈夫か」と確認したら、絶対にできると確約しました。先日借賃の前払いを10万元送って欲しいと言うので送金しました。完成は12月の予定です。

 

 3、日中の差、中国国内での違いを知る

 

 現在、青島伸栄服装公司は福山支店を登記しています。3年前から中国工場より福山支店に8名程度が3ヶ月間研修に来ています。しかし今年はサーズの蔓延で中止しました。この研修は一般的な研修生とは違い、中国会社の内部研修になっています。リミットとは無関係で中国工場の社員として来ます。

 この制度の初年度、6名の来日を決めたとき、私は来日希望者の多さに起きる混乱を心配しました。ところが総経理は「日本に行く希望者はいない」と言うのです。私は意味が理解できず、総経理が私に何か要求するために簡単に受けてくれないのかとさえ思いましたが、本当に研修希望者が1人もいなかったのです。日本に娘を行かせれば娘が売られてしまうと親が心配したのです。日本は悪い国となっているのです。日本は中国が悪い国と思っています。互いに悪い国としたら円満に物事が進むわけがありません。

 このプランは、「私が日本に連れて行き、私が責任を持って連れて帰る」と総経理が親を直接説得して実現しました。上海方面と青島、大連、天津、北京の北方面は感覚が違います。北部は日本の考えに近いと思います。総経理の娘を日本に留学させるとき、総経理の条件は上海方面の男性とのつきあいは絶対にさせないで、というのが条件でした。中国は北と南は別の国だと知りました。

 

 4、私営企業を中国で設立

 

 総経理の長男が日中情報システムで3年間勉強して本年4月に中国に帰りました。中国では私営(個人)企業を設立しました。合弁でも私営でも中国の総経理に全て任すならば同じだと私は考えています。私営企業は50万元(750万円)の資本金からできます。資本金が200万元(3,000万円)以上なら海外取引が可能なので、3,000万円貸して欲しいと言ってきました。中国では借りた物は貰ったと同じです。現状では資金に余裕がないので最低資本金50万元の会社を設立し、日本からソフト加工賃が送金できる方法を考えるように連絡しました。3ヶ月経過して100万円までは送金できるようになったと連絡がありました。100万円以上は100万単位に分割して送金するようにしています。現在送金は問題を起こしていません。

 外国との取引条件をどのように解決したか私にはわかりませんが、日本から送金ができればよいのです。ソフトはインターネットで送られてくるので、関税はかかりません。こうした芸当は中国の表も裏も知っている中国の総経理に任せているからできるのです。日本人の総経理では表面しかわからず、不可能なことです。

 

 5、留学生から学ぶ

 

 私は2年間ロータリークラブの奨学金を受ける中国留学生のカウンセラーでした。その苦労話を聞かせてくれるよう他のロータリークラブより依頼がありました。

 私が関わった女子留学生は福建省の出身で、広島大学法学部大学院で社会福祉を研究し、この11月に博士論文を提出します。担当教授によると合格は間違いないようです。帰国後は大学教授です。素晴らしい学生で私は教えられることが多くありました。ロータリーの例会での食事では、必ずお祈りをしてします。ある日私に「年寄りが重い荷物を持っておられるのに誰も手助けをしないのは、日本では手助けはしてはいけないのですか」と質問してきました。私は返事に困りました。中国は年寄りを大変大事にします。戦前の日本のよいところが中国にはまだまだ残っています。

 私は苦労話ではなく、多くを教えられたことを話すつもりです。依頼されたロータリーの方は、中国進出問題で苦労されたのではないかと思います。

 

 2003年9月25日

 

   笑顔着

     リミット株式会社

     代表取締役 有 木 伸 宏


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