2002年 8月号

 

 1、非常事態宣言でやや好転へ

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 既報の通り7月1日にリミットは非常事態を宣言して行動を起こし、お盆までには対策を一段階クリアしました。行動の基本的な考え方は、「売上げが半滅しても生き残れる組織」です。この目標の達成は大変なことです。今まで常に合理化してきたので、管理経費は最低です。そして営業部員がいない分、営業経費もありません。これらの経費相当分を企画室が使ってきました。この度は企画室の経費も整理しました。社員も厳しく査定しました。整理された社員の行く末が解っていて行動が決断できたのは、会社が生き残るか倒産かの限界における挑戦という事態になったからだと思います。

 一般的には赤字経営でも何とか維持しながらの体力競争だといいます。しかしそんな甘い考えは間違いです。我慢して待っていても事態は好転しません。私は今まで、赤字が予測できた時点で即後退すると言ってきました。この考え方は消極的ではなく猛烈な決断の積極的な行動と思います。採算がとれる限界まで下がり、それから積極的な行動を起こせばよいのです。組織を変えなくてはならないときに、体力競争と後ろ向きの考え方では3年先はどのようになるのでしょうか。

 

 2、誠実な中国青島伸栄工場

 

 リミットは中国と提携して情報会社を設立するために青島伸栄服装有限公司で日本語とソフトの研修をはじめて2年になります。非常事態宣言で赤字部門整理の方針を受け、日中情報システム(株)を設立しました。これでリミットの赤字負担はなくなりますが、日中情報システム(株)自体の赤字が解消されなければ、リミットの負担で、結果として整理です。しかしこの会社は大変面白い会社で、半年以内で黒字になると思います。中国では一企業一業種の許可が原則です。別に情報会社を作らなくてはなりません。

 中国では独資会社、合弁会社、個人会社の私営企業があります。私営企業は資本金30万元以上で設立でき、貿易ができるのは300万元(4,500万円)以上です。この情報会社は総経理の会社として作ります。私は、青島伸栄服装有限公司を独資の会社にして中国人の総経理に任せています。この度売上げダウンで生産を6割落としています。減産のお陰でリミットの在庫は計画通りに落ちています。それでも休業補償金は求めてきません。社員をリストラすれば退職金が必要です。3日働いて4日休んでいます。あらゆる手段で経費の節約をして、今は会社を守ることに協力してくれています。このような協力は中国人の総経理で、その上日本を理解している人でなくてはできません。

 

 3、ようやく素材メーカーが直販する時代

 

 先月、素材メーカーが製品を作り、販売店に販売すると書きました。私は数年前、商社が決算期になれば備後地区を駆け回っていますので、なぜ駆け回っているのかと尋ねたところ、「生地の引き取りのお願いです」とのことです。注文がないのに商社が勝手に生産したのかと聞くと、「注文をもらっています」と言います。それなら納品書を送ればよい。そして資金がないなら金利をもらって手形の延期をすればよい。何で商社が頭を下げてお願いするのかと言っていました。

 リミットは3月と9月の決算期には染め上がっている生地は全部引き取っています。そして素材メーカーには「値引き要求が厳しいのなら生地は売らずに製品にして売れば利益がとれるのではないか。無理な要求をするアパレルメーカーには生地を売らないと言いなさい」と言い続けました。生地が買えないと倒産します。一部のアパレルメーカーは強い商品を持たないのに、自分たちが一番強いと思っているのは大きな間違いだというのが私の持論です。私は何ごとも素直に考え、いかに自社の存在価値を発揮できるかを考え続けてきました。それで、素材メーカーは大量商品を生産し、多品種少量生産はリミットに任せなさいと主張してきました。この度の素材メーカーの製品販売発表は、私から見ればようやくその気になったかと思っています。

 

 4、過去を忘れて新たな存在価値を

 

 将来、販売店全部つぶれる事態にはなりません。まず、アパレルメーカーの製品を買ってやるのだという横柄な人を見下した態度で取り引きする会社から倒産です。商品が入らなくなります。販売店の選別が厳しくなります。お互いの立場を理解し、情報の共有が大切です。そしてユーザーにとって、メーカーより販売店の方が安心して取り引きできることをどのようにして確立するか、この点が大きな課題です。

 私は自動車の購入を系列のディーラーではなく、系列外のショップから買っています。事故をしても事故処理から示談が終わるまで全て処理してくれますので安心です。だから、少し高くても保険料を支払っていると考えて取り引きしていました。それが存在価値です。

 リミットも素材メーカーからユーザーまで、どのようにして存在価値を出すかに努力しています。その結果が、「価格を公平に」「納期を正確に」「品質の向上」です。存在価値のために情報システムの充実に努力し続けてきました。特徴を何で出すかを決めたら、そのことを守り続けることだと思います。この努力がブランド力になります。

 今後、生き残ることができる販売店は、川上にも川下にも魅力が必要です。何を特徴にするか、これは会社のトップが決めなくてはなりません。そして今後は、世界が数字の競争の時代から心の世界に入るという認識をもつことです。私は長年、仕入れの価格は言われた通りに払っています。支払は全て現金で送金手数料は少額でも全部リミットが負担します。仕入れも販売も交渉無しです。こうなると経験は必要なく、素人集団でできます。

 今、過去を捨てることです。過去の線上では何もできません。今までの常識が非常識になっています。素材メーカーがアパレルメーカーの選別を始めます。選別は業者の規模ではなく、会社の心、マナーによる選別になると思います。現在のようなたたき合いではお互いの首を絞めてしまいます。お互いが助け合いながら情報を共有し、販売予測の精度を上げて、必要なとき、必要な商品があるように無駄を省かなくてはなりません。そのために販売店も情報化が必要です。素材メーカーが末端までの全てはできません。

 私は絶対に販売店が必要だと思っています。つまり必要とされる販売店になればよいのです。

 素材メーカー、アパレルメーカー、販売店が対等の立場で情報を公開し協力して、いまこそ、行動を起こすときが来ていると思いませんか。

 

 2002年8月25日

 

   素敵に働く女性のためのワークウエア

     リミット株式会社

     代表取締役 有 木 伸 宏

コメント