2002年 5月号
1、楽な道を進む廃業の町新市
いつも大変お世話になりありがとうございます 。
備後地区は大変な変化が起きています。日本全体に大きな激震が起きると盛んに言われていました。その変化が具体的に現れてきました。
最近新市に行くと私が言い続けたとおりの活気のない町になったと痛切に感じます。以前は縫製工場の車に製品や仕掛品を積んだ車が多く走っていましたが、今は見ることはありません。以前は年寄りから若い者まで年齢相応の仕事があり、仕事をこなすのに仕事をしていない人を探すのが大変でした。高収入の生活レベルが高い豊かな町と言われ、ゴルフのシングルプレーヤーも大変多くいました。今は仕事が全部中国に移り仕事はありません。私の新市の家の地区で今年小学生の入学が二人と聞きました。周りを見ても年寄りばかりです。
先日新市で一番大きな土地を持って営業している会社の本社工場、寄宿舎(昔集団就職で九州から来ていました)を解体した跡に大手スーパーが出店するそうです。不動産賃貸業に変わるのです。私の所属するロータリークラブのメンバーでも不動産賃貸業に職業分類を変える2代目経営者が多くなりました。苦しい道を歩む自信を失って、目の先の安全な道を選んでいるのです。しかし賃貸の安全な道が将来の安全な道かどうかまだ結果が出ていないので分かりません。
私の哲学では楽な道を選べば将来は苦しい道になると思います。私はいつも一般常識から外れて非常識な考え方と言われ、不安な思いが一杯の中で我が道を歩み続けました。会社は大きくならなかったけれど、このような変化の激しいときに生き残っていることを私の守護神に感謝しています。
2、確実に生き残る道を求めて
さてそこで今後どう生き残るかということが問題です。
このリミット通信を書き始めたのが15日ですから、まだ5月の売上結果が出ていません。しかし今月も売上が落ちることは間違いありません。そんな現状で役員には次のように言っています。リミットが下請けなら親会社から仕事を止められると会社の継続はできなくなる。しかしリミットはブランドを持って売っているのだから、売上がゼロになることはない。今の現状は売上を追求しても、ユーザーの倒産やその影響で販売店の倒産などで被害が出たり、利益が無い商売をしてしまったりと必ず行き詰まる。大量の注文を目指さず、少量の注文を重視し、少量生産で大事に製品を作り、そして大切に販売をする。そして組織体制は売上に合った組織を作る。極端な考え方ですが、家内工業になってもよいと言っています。もっとも少量生産を中国において実現しているのでそんな事態にはならないのですが…。
会社を縮小させることは大変です。日産自動車は技術の面で負けていたのではありません。元社長が人員整理を敢行していたら、ゴーン社長でなくても回復できたと思います。日本人の特徴の情で行動が起こせなかったのです。
リミットとしても、今までの行動は無駄を絞るということで、ある意味で大変簡単でした。しかしこれからは、本当に血を流す痛みを伴います。出血多量で死ぬ場合もあります。捨てられた社員はどん底に落とされます。社員は社員で、そのことを考えたら必死に頑張らなくてはならないのに、今までの甘えの状況を引きずっています。これからは会社の規模の大小を問わず、今、いかに行動するか重大な決断の時代が来たと思います。
事業とは浮き沈みが激しいものであり、経営者はいつも孤独です。誰も頼れず、時には独りで非情な決断を下さなければならない場面にも直面します。そんなときに常に明確な目標を持ち、今に集中し、一歩一歩、歩みつづけて道を開かなくてはなりません。今は規模の大小ではなく生き残ることが先決と考えています。
3、中国での生産に期待とリスク管理を
最近、中国は大発展する世界の生産国になるとか、反対に中国の崩壊とかいろいろの意見が書いてある本が多く出ています。いろいろな中国に関しての本を買い勉強しました。どちらの見方が当たっているのか。私はどちらも当たっているし、どちらも当たっていない。正確な答えは出ないと思います。中国は依然として日本以上に難しい問題を幾つもかかえています。例えば国営企業の赤字、所得格差の拡大、幹部の腐敗、環境の汚染などなど、いずれも頭の痛くなる問題ばかりです。それを考えると、あの国の将来は手放しで楽観できるほどバラ色ではありません。では明日にでも崩壊するのかと言えば、これまた違うと思います。たぶんこれからもじわじわと経済力を伸ばしていくと思います。中国の強みは、勢いがあることです。これがいろいろ難題をかかえながら上昇を続けてきた理由です。その勢いはどこから来ているのか。
第1は経済のレベルも生活のレベルもまだ低いことです。そんな中で人々は少しでもましな生活を手に入れたいと目の色を変えています。第2は、20代あたりの若い労働人口の層がきわめて厚いことです。若い人が働き口を求めて動き回っています。これが勢いの源をなしているのです。
この勢いはいつまで続くのか。都会と田舎との収入格差が大きく、その差を利用できるので賃金の安さは10年は続きます。20年まえから中国は一人っ子政策を採用してきました。これが今20歳まで上がってきています。日本の子供以上に甘やかされています。その彼らが20年後、あの国の中核として社会を支えることになると今の日本と同じような激しい老齢化現象に見舞われます。そうなるとどうしても勢いが止まり、やがて衰えていきます。その中国とどう付き合っていくのか。私は最近中国に対して大変慎重になっています。もっとも中国も一人っ子政策の見直しをするようです。
日本と中国とでは文化のあり方が違っています。人間観も違えば、発想法も違います。長年のつき合いの私にでも理解のつかないことが多く起きます。私の場合は総経理と共に道を開いてきたので、お互いの理解がつかないことでも信頼の絆で解決してきました。しかし、一般の人には思いも寄らぬ落とし穴が待ち受けていることも覚悟しなければなりません。
日本では自分で借金をして会社を作り、仕事を探して道を開きます。中国は必ず資金を日本から送らせ設備をします。中国側の失敗の危険はゼロです。日本人感覚で投資をすれば失敗は防げません。中国側が投資をして軌道に乗せた工場へ、日本が企画した商品を輸入したのがユニクロです。中国での投資の回収は大変困難です。だからリスク管理が重要です。リミットは中国で何か起きれば、即日本で回収できるようにしています。そして日本での縫製工場は大変困難ですが、5パーセントの生産を残して種火だけは消さない努力をしています。
2002年5月25日
素敵に働く女性のためのワークウエア
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
コメント
コメントを投稿