2001年 10月号
1、厳しい状況を予測し、緊急の方向転換
いつも大変お世話になりありがとうございます。
9月中頃から異常な売上ダウンで推移していることに気づき、即行動を起こしました。具体的に書きますと、連休後の9月17日に素材メーカーへ全てキャンセルしてあらためてロットを示し再発注しました。そして売上ダウンが10パーセントから30パーセントまでの予測シミュレーションをし、18日に全社員を集めて大変厳しい状況になっていることを説明しました。試算表と予測シミュレーションを公開してリミットの財務状況を説明しました。同族経営方式導入のメリットで、リミットが非常に強い財務体質になっていることを説明しました。そして、在庫さえ増えなければ、利益が減少しても倒産することがないことも解説し、在庫を最重点に対策を立てるよう指示しました。翌19日には売上予測を再検討し、私の責任で30パーセントダウンの予測をしました。私の哲学では最悪を考えて対策を立て行動を起こします。このことでいつも危機を乗り越えています。この予測を甘くすると、再び対策を立てるとき困難が倍加します。逆に30パーセントが20パーセントになって商品が不足したときは、全力を上げて追いかけ生産をする方がプラスが大きくなります。私はこのように考えいつも結論を出します。
2、日中が一心同体であると認識
中国工場にも即刻この方針を示し、21日金曜日には中国工場の3割の人員整理を通告する書類を役所に提出する準備を確認しました。電話で5日間の間に中国工場まで生産体制を変えたことになります。これは中国工場と日本のリミットとが一心同体だからできることです。
これまで、リミットががんばらなくては中国青島伸栄が発展しない、と中国の総経理はいつも言っていました。今年来日したとき、肝臓が痛いというので、時間をかけて日本で精密検査を受けさせました。悪性腫瘍でもあれば生命の危機が経営の危機に直結する、という最悪のシナリオを心配しました。総経理の息子と娘が日本で勉強中でまだ実践には時間が必要です。検査の結果は取り越し苦労だったのですが、中国工場で90パーセントを生産しているリミットは大変なことになる、と気が重くなりました。総経理には私の思いが伝わり、中国と日本が一心同体だと考えるようになったのです。
念のため9月28日に中国工場に行きました。そして総経理にリミットの現状と財務状況を試算表と資金繰表で説明し、リミットも全社員にこれと同じ資料を見せて説明したことも伝えました。すると総経理は、こんな資料を社員に見せて税務署に密告されたら大変なことになるのではないかと心配しました。不正が発覚した経理責任者を退職させたところ、それを逆恨みして、税務署当局に虚偽の密告をして3ヶ月間も調査に入られた経験があるからです。
そこで私は、リミットの在庫が正確でなかったら、荷組はコンピュータが自動でしているので混乱して出荷ができなくなる。また、中国も含めたリミットグループ全ての正確な数字を掌握しているから即決断して行動を起こすことができる。日本の税務調査でこれだけ正確な資料を即提出できる会社はないと言われていて、誤解を受ける余地はないと説明しました。この度の行動は平成5年から1年半でシミュレーション通りに工場休業して在庫を半滅させた経験が大きく生かされています。工場の休業でリミットが倒産するとの噂も出て毎日が地獄でした。あのときの苦しみに比べればこの度の対策決定は極楽です。苦あれば楽ありとはこのことなのではないでしょうか。
3、変わる中国に企画力の強化で臨む
私は中国に行くたびに中国人の旺盛な労働意欲に恐怖感を抱いて帰ります。盛況だった青空市場も、最近は非衛生ということで減りつつあります。連結バス(前後をジャバラで繁いだもの)や三輪自動車、大勢の人を荷台に乗せたトラック、廃車寸前のような車、その一方でベンツやBMW、アウディなどの高級外車が同じ道路を走っていて、私が子供の頃見た風景と現在が混在する不思議な光景でした。最近では連結バスも、荷台に人を満載したトラックも目抜き通りでは見かけなくなりました。タクシーもバスも新しいものに替わっております。主な街路はゴミがなく、きれいになっています。日本の生産は沈没して中国は世界の生産国として一人勝ちだと思います。中国は大きく変わっています。そこでリミットは中国を競争相手と考え、企画力のレベルを強化するよう求めてきました。
10月12日リミットから情報会社に出向している総経理の息子とリミットの情報部門の2人が中国工場内の情報学校の指導と今後の方針を話し合いに行きました。最初は何をすればよいか解らずに情報学校をスタートして1年になります。日本と中国の若い人材の養成が後1年すれば、日本と中国で連携して情報システムの受注がスタートできるのではないかと思っています。設立の方針を出して2年が経ち、中国に行く若い2人を駅で見送ったとき、これが無から有を生み出す感動か、と感慨深いものがありました。
中国人から見た日本の現状が下記のように出ていました。
「李マネージャーは、16歳の時に香港の日系メーカーに就職。組み立て作業者として働きながら独学で日本語をマスターし、現場からのたたき上げで日本のモノ作りの神髄を学んだ。10年前に日本に出張した時、清潔で整理整頓の行き届いた工場や作業者のモラルの高さに感動した記憶は、今も脳裏に鮮明に焼きついている。ところが今年、10年ぶりに目にした日本の工場は、往時の輝きをすっかり失っていた。作業者たちは熟練度こそ高いが、動作はだらだらとして活気がない。休憩時間になるとすぐに持ち場を離れ、喫煙室のソファに寝そべってタバコをふかしている。そして終業のベルと同時に、皆さっさと帰宅してしまった。『作業者一人ひとりが改善意識を持ち、全員一丸となってがんばる日本の姿はどこに行ってしまったのか。』マネージャーは、このように言っています。」
私は、この記事を読んで、リミットのがんばりに確信を持ちました。皆さんはいかがお考えですか。
2001年10月25日
素敵に働く女性のためのワークウエア
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
コメント
コメントを投稿