2001年 9月号

 

 1、マイナス材料をプラス材料に

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 9月は大変な状況です。今何が起きても不思議ではない状態になっています。

 売らなくてはいけない、売って不良債権を増やしてはいけない。この矛盾する状況の中では的確な判断と対処が求められます。私は社員に、このような事態は今までに何回も経験したことで、すでに織り込み済みであわてる必要はない。今までの行動の線上で行動していれば、必ず良い結果が出ると言っています。そしてこの事態を経験したことのない次の世代にはまたとない教育のチャンスだと思っています。私がいつも自分に言い聞かせていることは、マイナス材料を逆にプラス材料にするということです。この考え方に徹したから瀕死の病気を克服し、どん底の貧困から一歩、一歩と立ち上がってきたのです。その実績と自信がどんな悪条件にも負けず、道を開く信念と自信になっています。若い世代にはどんな不安な心境になっても、外部に不安を与える言葉、自信のない言葉を出さないようにと教えています。多くの会社の2代目が不安な心境で目の先の対策に追われ振り回されています。そして、その結果は逆に大きなマイナスを起こし、結局後始末に追われる時が来ると思います。

 

 2、「排他」的な京都商習慣は是か非か

 

 昔から京都府室町での商取引は、顧客は商品ではなく経営者の人格に価値基準を置いています。毎日真摯に仕事をする姿を見てもらって、信頼できる人物だという評価を得て初めて買ってもらえるのです。しかし信頼を得るのは難しいが、いったん信頼されると長期にわたって取引が行われるのです。信頼を得る方法には、同業者との違いを出すため扱う商品に個性も必要です。同じものを売ったのでは値段の競争になって、狭い市場ではお互いの首を絞め合うことになり、生き残れないからです。同じものを扱って客を奪おうとするところは、仲間に入れてもらえません。誰がどんな仕事をするかという棲み分けができていなければ生きてはいけない世界です。この排他的とも思える関係は、実は限られた市場で過当競争を避ける知恵です。既得権や排他的取引を罪悪視するような考え方もありますが、既得権を大切にする排他的な取引慣行は、物真似を排除する手段でもあります。

 京都で成功した企業は、まず人格を評価してもらい、新製品を開拓するという2つの原則が守られています。限られた市場で上手な棲み分けを図ってきた京都の知恵は、狭くなってしまった世界市場で日本企業が生き残るための哲学を示唆していると思います。このような京都の風土が多くのナンバーワン企業を育てています。そして厳しい経済状況の中で発展しています。

 京都の産業風土に比べて、繊維業界の産業風土を皆様はどのように感じられますか。

 

 3、同族会社の積極性に着目

 

 会社そして個人の運命は努力も大事ですが何かの縁、機会によって大きく変化します。私は税金を払う努力をすることが会社を発展させ、社会にも貢献する考えだと頑張ってきました。税務調査でも不正を指摘されたことはありません。そしてリミットは将来必ず上場すると言っていました。しかし売上至上主義に疑問を持ち、特徴を持って差別化する会社にしようと考えるようになりました。しかし財務の面では資本金は5,000万を越えて交際費は控除がゼロで大企業と同じです。夢が大きかっただけに、大でもない小の形態でもない中途半端な形態になっていました。

 3年前、専務が中小企業大学に勉強に行ったとき、講師から同族企業経営方式について講義をうけました。その折のテキストを読み大変感じることがありました。テキストによると、この国の法人企業数、二百数十万社のうち99パーセント以上が中小の同族会社で占められています。同族企業は同族関係者が自分勝手なことをする非民主的でレベルが低い企業であるという考え方が基本になっていました。これでは、日本の99パーセントの企業は悪い企業ということです。不況とはいえ、日本は現在世界で第2の経済大国です。それは大企業だけでなし得たことではありません。中小同族企業の下支えがあったから実現することができたのです。

 確かに同族企業には欠点もありますが、だからといって同族企業というだけでレベルの低い企業ではありません。むしろ同族企業を積極的に容認して、同族会社でなければ実践することができないことを積極的に導入し、内部留保を増やすのです。法人税の50パーセント、個人所得税の40パーセント、どちらが節税か。配当金は税引き利益で払うので税金の二重払いです。配当金はゼロ、同族会社ならではのことです。私は第三者の株を買い取り、同族会社にしました。個人の銀行定期は全部解約して会社に個人貸付金にしました。個人貸付が増えれば内部留保が増えたと同じです。個人貸付金の金利は6パーセントまで認められます。利子税は20パーセントで大変節税になります。

 会社の経営の安定のため手形発行ゼロを目指して行動を起こし、3年で最高発行時の4分の1まで減りました。詳しく書くことが紙面の関係でできませんが、5冊の本の縁で会社の財務が大きく変わりました。同族企業経営指南本のお陰で行動を起こし、この厳しい状況の中で自信を持って行動を起こせる事に感謝しています。

 

 4、得がたい経験、四国霊場遍路

 

 四国霊場八十八カ所参りが人気を集めています。なかでも約1,200キロにわたる遍路道を徒歩で巡拝する「歩き遍路」が大人気です。「リストラなど将来への不安を訴える人が増えた」と言われます。「自分探し」や「いやし」を求める現代人の心の乾きが背景にあるのかもしれません。

 徳島県鳴門市にある四国霊場第一番札所の霊山寺では、「徒歩巡拝者記録帳」を境内に備え付けており、「歩き遍路」に取り組む人たちが訪れるたびに記帳しています。平成2年は240人だった記帳者が、10年には1,000人を突破し、昨年は1,700人を数えるまでに伸びたそうです。年齢層は5、60歳代が半数を占めていますが、注目は20歳代が約1割にもなっていることです。第五十八番札所・仙遊寺住職も「はるか先にある寺院を目指して歩く姿は正に人生そのもの。みんな自分を見つめ直す機会を求めているのではないか」と分析しておられます。

 鹿児島、札幌ナンバー等、全国から来ています。先日、北海道室蘭の方が56回目を回っておられました。使ったお金で家が建ちますと笑っておられました。私は1人で車を運転して現在16回目を回っています。今年も7月、8月の猛暑の最中、行きました。汗が噴き出して大変でした。しかし得難いものがあるので行くのです。この事は巡拝した人しか理解できません。

 

  2001年9月25日

  素敵に働く女性のためのワークウエア

    リミット株式会社

    代表取締役 有 木 伸 宏

コメント