2001年 5月号

 

 1、日本一のファッションメーカーへの挑戦

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 今月は夏物の最盛期で、売り上げも昨年より少し増えるのではないかと思っています。夏物最盛期の5月17日、受注残が38万円と社内電子掲示板に出ていました。私は5月の夏物最盛期に何かの間違いではないかと思い、確認のために聞いてみると、間違いありませんでした。ただし販売店の都合で月末までの納期指定は商品を確保していますので、受注残には入れていません。受注した商品がほとんど即日出荷されているのです。私はこの数字を見て、リミットも若い世代が数字の面では大変進歩したと思いました。商品が間に合わず、お客様よりしかられることが長年続いた時代とは隔世の感がします。

 商品を山に積んで納期に間に合わせることはできるけれど、それでは在庫資金で行き詰まります。資金の余裕がないので在庫は限りなくゼロ、納期は即納。こんな無茶な目標を立てて行動を起こしました。こんな無茶な目標に挑戦ができたのも、繊維の経験者が居なくて素人集団だから素直に聞いて努力してくれたのだと思います。繊維の経験者が生産計画をしていたら、そんなことは不可能と最初から挑戦をしていなかったと思います。大きな夢を持って挑戦をし続ける事で結果が出たのです。

 そして今、さらに次の大きな夢を描いているのです。若い世代が20年、30年かけてもユニフォームメーカーから日本一のファッションメーカーに生まれ変わると言っています。そのために社員の半数は総合研究所にいます。日本一のファッションメーカーに変身すれば、発展途上国からの追い上げがあっても人間が裸で生活をしない限り生き残ることができます。繊維業界は今大きく変わらざるを得ません。少しでも現状に安住すれば必ず発展途上国のメーカーの攻勢に消え去るときが来ます。

 

 2、情報化時代の経営者に求められる非情さ

 

 3年前ぐらいからERP、SCM、MT、EC等インターネット化に対して盛んに英文字略語やカタカナの文字が登場してきました。私は外来語辞典で一つ一つ調べ簡単なことを解りにくく書いていると感じつつ雑誌や本を読みました。それでも情報化時代を盛んに宣伝する言葉が解らず最近ついてゆけません。私のコンピューター人生20年は一体何だったのかとも思うようになりました。本当に苦労して構築してきたのに、こんなにも若い世代は簡単に追い越して行くのかと愕然とします。プリンターの接続も、昔は設定だけでも大変でした。今は電源を入れれば自動で設定されます。私の知識は過去の遺物になってしまったと思い、陣頭指揮から降りることにしました。

 最近の雑誌を読むとそのERP、SCM等の敗例が次々と出ています。今月の日経情報誌の表紙に「危うし!日本のサプライチェーン(素材から販売までの連携)改革失敗の研究シリーズ特集」とありました。インターネットビジネスにしても、経営哲学が解らない若者がコンピューターソフトを知っていれば全てができると考え、企業の立ち上げがブームとなりました。その時も私の今までの苦労は何だったのかと思いはしましたが、何か筋道が違うどこかおかしいと感じ、インターネットに対しては慎重にとの方針を示し、投資を最低限にするよう指図を出しました。若い世代からは、無制限な投資で構築するよう聞いていたのになぜか、と質問がありました。私は何か筋道が違っている、としか言えませんでした。当たっていたのです。今は失敗のオンパレードです。

 しかし終わったわけではありません。実は情報ビジネスはこれからが本番なのです。多くの失敗例から方向が見えてきたのです。それがインターネットに適したビジネスモデルの創造です。インターネットは通信手段です。大事なのは色々な情報が提供できる情報基本システムの構築です。この構築に努力し、素材メーカーから販売店までネットで連結して一体となり合理化することが一番大事なことです。

 帝人・東レそしてファッションメーカーなど14社でコロモドットコムを設立し、サプライチェーンを3年かけて構築すると出ています。評論家の談では、そんなに時間をかけて間に合うかと出ています。私は逆に、そんな短期間にはできないと思っています。

 例えばリミットの昨年9月繁忙期に納期に1ヶ月以上要した商品は4枚で、今年の5月17日の受注残は200枚です。売り上げは昨年比増の予定です。中国生産90パーセント、多品種少量生産で即納率は90パーセント以上です。在庫も海外在庫も含めて3ヶ月です。この結果は、素材メーカーから副資材、国内生産、海外生産、貿易業務全ての分野が連携し、各分野が責任を持って完遂しているからです。

 その陰では私は、取引中止などの荒療治で公私とも大きな摩擦を乗り越えて行動しているのです。改革は従来の人間関係をも壊して新しい関係をもたらします。これは社員にはできません。リミットグループは非情な行動を20年続けた結果として、サプライチェーンを完成させました。その見返りが情のない非人間として押された私に対する烙印です。

 

 3、パワーブランドを志向するリミット

 

 リミットは現在マイリミットの女子ユニフォーム、ジョムジョムのビルメンテナンスユニフォーム、ニューオフィスのオフィスユニフォームを販売しています。このブランドを有名ブランドにする目標を持っています。ブランドを育てることは短期間ではできない、ということについて次のような記事が出ていました。

 「パワーブランドが提供する夢には、時間を通して変わらない、組織の誰に聞いても変わらない、どの商品についても変わらない、という一貫性がある。その一貫性に責任を持てるのは、やはり経営者しかいない。さらに一貫性と同時に、革新的であることもパワーブランドの重要なルールの一つだ。100年の伝統を持つ古いブランドでも、常に顧客の半歩先を行っていたからこそ100年間先頭を走ってこれたのだ。組織内に先取性のメカニズムが内蔵されていたからこそ、それが実現できたと言える。」

 リミットは動きやすさを強調して、「着てみて下さい」との宣伝が長く続きました。この事はリミットの全てのブランドに適用され今でも変わりません。研究所では中高年の体型に合うパターンの研究もしています。その結果、パターンが段々と確立しリミットスタイルができております。いまではリミットの全ての商品は作業服メーカーではなく、ファッションメーカーとしての商品になっています。時代の問いかけに応え絶えず変化をし続けることが、100年企業ブランドの確率の基本だと考え、研究所を充実させるためになお投資を続けています。

 問われているのは、リミットだけではありません。この通信を読まれているみなさんのビジネスマンとしての生き方も変化し続けるリミットのとの関わりで大きく問われています。

 

 2001年5月25日

   リミット株式会社

   代表取締役 有 木 伸 宏

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