2001年 4月号

 

 1、新規事業に挑戦

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 3月の売り上げは芳しくありませんでした。4月は横ばいでしょう。今年は大変厳しいと思います。十数年前にご子息の結婚式に招かれたある老舗販売店が倒産しました。結婚式はその地域の有力者が列席していて盛大な結婚式でした。ここ備後地区も大変厳しい状況です。その主な原因はユニクロの低価格戦略です。備後地区のカジュアル服業界は、作業服の不況でも大変好調でした。

 そのカジュアル服業界が大変厳しい状況になっています。大手スーパーがユニクロに対抗した価格を出すには、アパレルメーカーの利益をゼロにしても負けると思います。しかも新聞には三井物産がイトーヨーカ堂と商品政策や物流面で提携し取引拡大をめざすと発表されました。ユニクロは商社に全面委任ではなく、一部のみを委託して手数料が1パーセントだと新聞にでていました。一般の手数料ではこんなに安くはありません。

 最近、ユニクロの情報システムがマスコミで紹介されています。考え方に共感する点が多くあります。ユニクロは単品大量生産で低価格、リミットは多品種少量生産で高価格です。これが両社の違いです。価格に対する考え方が真反対になりますので競争相手ではありません。備後地区の業界がユニクロにより苦境になることは誰もがなんとなく理解していたと思います。しかし好調のときは問題を先送りにします。伸びてゆく会社と落ちてゆく会社の差は何か。伸びる会社は絶えず新しいことに挑戦しています。

 新しいことに挑戦することは最低3年から5年は赤字になります。その怖さ故になかなか挑戦できないのです。新しい挑戦を避けた方が目先の利益がでます。リミットの歴史をみても、絣のモンペイから男子の作業服そして女子の作業服、次はオフィスユニフォームと技術の向上に挑戦を続けてきました。そして次はファッション衣料に挑戦を、と言っています。人間が裸で生活しない限り、その時代に必要な衣料を作れば生きて行く道は必ずあると言っています。

 中国との関係においても合弁ではなく困難な独資を選び、貿易実務も経験のない女子社員で直接貿易を手がけてみたり、無謀ともいえる挑戦の連続です。あくなき商品開発のため社員の半数が開発要員です。その結果、未だに本社ビルを持つこともできません。今までの投資金額は膨大な金額です。しかしこの投資のおかげで現在があると思っています。

 

 2、挑戦とは自分との戦い

 

 ところでその投資ですが、今年企画担当が計画しているニューオフィスの投資額を聞いて私も震えました。また、今年は売り上げが落ちるかもしれない大変な年にそんな金額を投資したら大変なことになると反対しました。

 しかし研究所は絶対に必要な金額だと言いますので私は折れて認めました。同様の体験を今まで数多くしてきています。結果の分からないことに投資することは大変です。いつも諦めの心境で投資してきました。そして自分自身に、必ず道が開けると自己暗示して、心の安定に努力してきました。不安でイライラすれば胃に穴があきます。挑戦することは自分自身との闘いです。それを避ければ脱落です。そのことは企業盛衰の歴史が証明しています。

 

 3、中国と心からの信頼関係を

 

 3月に中国工場の総経理の娘と中国雲南省の昆明周辺を旅しました。ベトナム、ラオス、ビルマに近く少数民族が多くいます。昆明へは日本から直航便がありますが、航空会社の予約オーバーで乗ることができず、広州経由となりました。広州は以前にも一度行ったことがあります。久しぶりの広州はずいぶん変わっていました。以前は古い飛行機が並んでいましたが、最新のB777が五機並んでいました。広州から昆明に着いて飛行機を乗り継ぎ50分ほどの旅程の町に行きました。私はこの町に飛ぶのはプロペラ機だと思っていましたが、予想に反してB537のジェット機でした。田舎の空港は小さくてもきれいな建物でした。そして次の40分のフライトで町に行くのも同じ機種の飛行機で快適でした。私が中国に行き始めた頃は、国内線の飛行機は古くて無事に着陸する事を祈らずにはおれませんでした。変化の大きさに中国の発展を感じました。飛行機はどれも全部満席でした。

 中国は広大です。昆明から北京まで飛行機で4時間、特急列車で48時間と聞きました。飛行機が発達するのは当然です。また電話も以前の有線では配線が大変です。しかし携帯電話のお陰で広大な中国でも電話に不自由はありません。配線の必要な高速回線は広大な国だけに大変な作業だと思います。そしてどこに行っても建築ラッシュでした。土木工事は重機ではなく、すべて手作業でしていました。重機を買うより人件費の方が安いのだと思います。中国の辺境の地を旅しても、中国は大変強い国に発展するのではないかと感じました。これからは中国と心より信頼関係を築き、日本とお互いの長所を理解し合いそれを生かして提携した会社が強い会社になると痛感しました。

 

 4、ネット企業に求められるリーダーシップ

 

 ファイバーネット・ドット・コムの設立にリミットは女子ユニフォーム・comを利用して参加します。一部の販売店に説明を始めています。ファイバーネットには色々な繊維分野の会社が入ってくると思います。

 この会社が必要とするのは、相互に情報提携できる販売店です。その情報で一番大事なことは、商品の販売予測です。今まで納めている商品の今年度の発注見込確率、商品の変更予定確率その他の情報を集計して販売予測をだします。そして生地から製品の生産計画をたてます。今までの問題点はデータが何もなかったことで、必要なときに商品が間に合わなかったり、無駄な在庫を積んでいたことです。

 この問題点を解決するには、各段階の情報を共有して対策を考えなくてはなりません。そしてが出資企業がグループを作るのではなく、川上の位置にある企業が完全な主導権を発揮することです。コンピューターシステムの構築も強力なリーダーがいない場合には必ず失敗します。その他でも失敗の多くは、強力なリーダーがいないときに起きます。この考えが基本になると思います。

 そして取引関係はお互いに対等の立場で協力していくことです。「買ってやるのだ」の態度は捨てなくてはなりません。これまでのビジネスのやり方は終わりです。このような考え方で新しいビジネス方法を構築し、早く挑戦したところがこれからの勝運を掴むと、私は思っています。

 

 2001年4月25日

   リミット株式会社

   代表取締役 有 木 伸 宏

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