2001年 1月号
1、新世紀我出社せず、されど……。
いつも大変お世話になりありがとうございます。
21世紀、新しい時代を迎えるにふさわしく、リミットでは私の時代から若い世代の時代へと事務的なことから対外的なことまで全てが移行しつつあります。私の仕事は3年先の目標、方針を出し、物の考え方を教育することになっています。私への来客があるときだけ出社します。第1金曜日の午前5時からの役員会議、土曜日午前5時からの部門長会議にも今年からは出ていません。こう書きますと、引退して会社のことは若い世代に全て任したように思われるでしょう。実際には以前より会社のことがよく分かるようになりました。
午前5時に会社のメインサーバーが自動で稼働します。私はインターネットでそのサーバーに接続して、社内掲示板を見ます。売上から受注残、クレーム情報、各部門からの情報を閲覧します。早朝色々なことを猛烈に感じます。問題点をメモ書きし、午前7時頃から一斉に取締役に電話をかけます。社内掲示板で意見を聞くと、全員が真剣に返事を書くので勉強になります。だから自宅にいても、頻繁に出社していた頃以上に会社のことが詳細に分かるのです。そして次々と改革改善の考え方も出てきます。朝4時から6時までは大変楽しい時間です。
経営者は都合がよい場所で指図ができるようになりました。インターネットのおかげです。21世紀はビジネス以外にも、今までは考えられなかったことができるようになるのではないでしょうか。
2、IT革命第二局面へ
情報技術(IT)バブルが崩壊しました。米国ナスダックや東京市場の情報通信株の大幅な下落も起きています。しかし情報技術はこれで終わったのではありません。IT革命の第二局面に入ったのです。崩壊した原因は根本的な考え違いをしていたのです。例えば販売店を開業するときには、商品の仕入れ、販売ルートの開拓から電話、ファックスまで色んなことを準備しなくてはなりません。そのことを無視して電話とファックスだけを準備して商売を始めようとしたのです。それでうまく行くと誤解した人が潰れたのです。インターネットは電話やファックスと同じレベルのビジネスツールです。受注や通信の手段だけでは商売にはなりません。
これからは顧客基盤や社会的信用で優位に立つ伝統的大企業が様々なマーケットを立ち上げ、取引を大幅に簡素化するケースが増えると思います。案の定、ある業界紙に東レ・帝人・NECで今年5月にファイバーフロンティアを立ち上げ、合繊をはじめとする調達販売サイトを稼働させる、と出ていました。これからはこのようなケースが続々立ち上ってくると思います。記事は続いて、これらのサイトが旧来型の商習慣から抜けきれない繊維業界をどのように変えてゆくか。興味が尽きないインターネット社会の到来、SCM(原料調達から製品納入まで)の概念浸透で「契約の字は『軽約』と書く」と自嘲する業界感覚を変えて行くことは間違いない。その中から真の業界標準ビジネスモデルが誕生してくるだろう。と述べられていました。リミットも素材から生産、製品販売までのグループに入るようになると思います。素材から生産、販売の流れの中で、強力な体制作りができているところがインターネットビジネスの流れに乗ることができます。IT革命の本番はこれから始まるということをしっかり認識し、特徴ある基盤をもたなくてはと思っています。
3、いよいよ廃番商品の整理へ
リミットは長年、生産から販売まで全分野で完全管理をするという目標で努力してきました。その陰で遅れていたのが廃番商品の整理です。お客様優先で一枚でも生産して納品することを長年続けた結果、廃番処置が遅れていたのです。生産コストから考えるとこのような商品群は早く廃番にした方が工場の赤字が少なくなります。そこで前期1,500万円の商品を廃棄しました。そして今期も約1,000万円の商品を廃棄します。長年に渡る廃番商品を整理しました。
女子ユニフォームは安くしたからといって完売できるものではなくどこまでいっても廃棄商品ゼロにはなりません。幸いリミットでは中国生産が小口生産にも対応をしてくれていますので、生産計画を確実にたてればよいのです。これを今年の最重要課題として、総合研究所と生産計画担当が研究に取り組んでいます。販売予測は人間の知恵を超えた判断部分があります。しかし解らないでは済まされません。人間の恣意が入り込む余地を限りなく小さくしてマニュアル化することを今年の大きな課題にしています。
4、中国生産は中国人に任せる、その理由
昨年12月、3泊4日の予定で中国青島に行きました。目的は生産の行き詰まりを奇跡的に打開した私と総経理がその労苦を記念し親交を深めるためです。気楽な気分だったのですが、飛行機が行きは6時間遅れ、帰りは4日遅れました。原因は内陸部の西安が暖冬で霧が発生して飛行機が飛べなかったのです。
飛行機は西安から青島経由福岡です。中国の国内便ですので青島では日本語の案内がなく情報が入りません。いつ飛行機が来るか解りませんので、日中はホテルで待機しました。ホテルの食事も3食とも中国人に合わせた食事で私には大変です。添乗員がいる団体旅行ではないので、情報収集は総経理と彼の娘が大活躍しました。総経理が西安に電話して状況を聞き、娘が日本語で説明しました。宮崎大学の教授グループ一行もおられ、大変感謝されました。4日も遅れることが解っていれば、運賃を二重払いにしてでも日本の飛行機で帰ることができたのですが……。最初の日は出国の手続きを済ませて待っていました。5時間が経過し西安からの情報で飛ばないことが解っても、青島空港は飛行中止の連絡がないと言って外に出してくれません。文句を言っていると、そこに中国共産党の地位がある人がいて、大きな声で責任者を呼んでこいと叫び、責任者に大きい声で「外国人にこんな扱いをすることは中国人民の恥である」と言い始めました。途端に態度が一変して税関が直ぐ集まり、手続きも直ぐに済んで外に出ることができました。中国との付き合いは大変なことです。全てのことでこのようなことが起きます。日本人の考え方で対応すれば癇癪が起きるだけで解決にはなりません。
それで総経理に中国のことは全て任せているのです。
2001年1月25日
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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