2000年 11月号
1、20年間のソフト集大成が最優秀事例に
いつも大変お世話になりありがとうございます。
先号リミットの情報システムがNEC本社のホームページに英語版、日本語版双方に掲載されたことを書きました。そして時事通信本社からは中小企業のIT技術の正月特集を配信するために取材を受けたことも書きました。今月に入りNEC本社より優秀事例六十七例の中からリミットのシステムが最優秀事例になったと連絡がありました。しかし、そのように評価されたことに社員には実感が湧かないというのが実際です。
インターネットでコンピューターに直接接続して情報提供が可能になったのは、ソフト会社にセキュリティ対策の高度な技術があったからです。システム本体は二十年間にわたり、販売管理、生産管理、財務会計全ての分野で疑問点を一つ一つ解決し続けて来た結果です。そして三工程を二工程に二工程を一工程に、最後は全てをコンピューターで自動化できないかと暗中模索を重ねそれを実現してきたのです。一段階のステップアップのための考え方がまとまればソフト会社にリクエストを出します。そうするとソフトを実現してくれます。この繰り返しの中で二十年間オフコンのバージョンアップが続いても、過去のソフト資産が全部引き継いで生かされたことです。NECには感謝です。
リミットグループは現在六社ありますが、リミットがこのコンピューターのソフトを利用しています。グループ会社にとってはリミット流になっているソフトが流れに合わないケースが多くあります。それを流れを変えてリミットのコンピューターに合わせています。そのために各会社の個別のデーターと総合計データーが自動化されており、事務の経費は増えません。そしてグループ全体の現時点情報が簡単に解ります。
2、自社を知り、指導力を発揮すること
私は昔から一人一人が会社を持って経営する分社経営の考えに徹しております。損益が解りやすく問題点がよく分かります。そしてコンピューターで統合して現時点のデータを解るようにしています。
このシステムが大きく力を発揮した例として、平成4年の最高の売上のあと翌五年からの売上減少に際してです。5年度はさらなる売上増を予測し在庫を蓄積していたので数字的にはひん死の水域でした。そこで売上半滅という最悪の事態を想定して即行動を起こしたのです。資金調達と同時に在庫の調整を始めました。在庫を減らすには生産中止あるのみです。給与を支払い工場を止めました。倒産が取り沙汰されましたが、シミュレーション通りの行動でわずか一年半で在庫を半滅させました。これは全社の状況を完全に掌握しているからできたのです。数字は掌握していても行動を起こすことが遅れたら在庫過剰でリミット㈱は消えていたとも思うのですが……。
ある雑誌の今月号に大手の会社が財務会計、販売管理、在庫管理、購買管理、生産管理をするためにERP(統合基幹システム)を導入してシステムの構築を始めたと出ていました。これに至る経過として96年9月に導入を開始して、4年目の2000年10月にシステムを完全廃棄し、20億円の損害金を償却したと紹介されていました。現在多くの会社がERPを導入して企業の経営資源を効率的に管理しようとしています。皮肉なことに、結果として多くの会社が失敗しています。この会社の失敗の大きな原因はソフトに合わせて組織、やり方を変更する原則を無視したことです。各部署で特例の別ソフトを1200も作ったようです。これでは今までの各部門別のソフトでなくては動きません。このようになるのは強力なリーダーが居らず、社員に任せるからです。社長が組織を変え、抵抗する者はあるときは切って捨てるほどの社長の指導力が必要です。
もう一つ失敗の原因に得意先との取引関係のあり方にも問題があったようです。システムが合わないお得意先は説得に全力を挙げ、どうしても駄目ならこの場合も切り捨てて行く覚悟が必要です。この事は社長でなくてはできません。リミットの場合でも値引き無しの販売等多くの問題でお得意先からおしかりを受けました。しかし社長の私が後に引かなかったから現在のシステムが動いているのです。価格設定がルールで決められたとおりで流れるから自動化できるのです。そして納期も出荷もルールに従ってしているので自動化できるのです。納期も営業の都合で決定していたり、販売価格が得意先別またはその時の話し合いで決めていたら自動化できません。対面して営業をしないインターネットビジネスではトップが信念を持ってルールを作り、それをシステム化しないとインターネットビジネスは成り立ちません。
3、社長の信念で価格設定を
ニューオフィスユニフォームを販売している夢パレットは新カタログ制作に当たり、価格の表示の議論をし、従来の上代の四掛け設定、上代の六掛け設定そしてエンドユーザー渡しの価格設定との三通りの意見が出ました。検討の結果、エンドユーザー渡しの設定を採用しました。しかし価格表は別冊にする意見とカタログに価格を載せる方法とで意見が分かれました。販売店からはカタログはオープン価格で価格表を別冊にとの考が目立ちました。オープン価格については『日経パソコン』誌の読者の広場で次のような意見が出ていました。パソコンを買うためにカタログを集めて検討したが全てオープン価格でいったいいくらなのか解らない。販売店に電話で聞くと店まで来てくれと言う。雑誌から推定できるが、信頼度が低い。だからコンパックやデルのように販売価格を明示して欲しいと述べられていました。
インターネットでデルコンピューターに注文するとお客の希望に合わせて周辺機器を設定して価格を表示します。電話でもお客の要望を聞きアドバイスしながら設定が終わり価格が決まります。価格の交渉はありません。そしてシンガポールより直送してきます。これからの対面販売そして次の時代のインターネットビジネス時代は販売価格を設定してその価格で売る時代になると思います。それだけに価格設定は会社の運命を賭けて社長が設定しなくてはなりません。社員が価格を変更することはできません。
価格の混乱は社長の信念の揺らぎです。信念を持って商品を作り、そして価格を設定して売りに出したのですから決められた価格で売るのは当然です。それを値引きすることは信念のない価格設定をしたことになります。安く売るのだったら最初から安く価格設定をすればよいと思います。
夢パレットはお客様への販売価格をカタログに載せる事に決まりました。
2000年11月25日
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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