2000年 9月号

 

 1.猛暑で一言

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 厳しい暑さが続きましたがこの暑さについて一言。大都市ではビルの屋内冷房が屋外の温度を相当上げています。東京や大阪駅では列車から吐き出す温風は蒸し風呂状態です。ビルも列車も扇風機にすれば、外気の温度は少しは下がるのでしょうが…。名古屋の洪水も河より低いところに住めば水に浸かることは当然です。百年前にはその様なところに人が住んでいなかったのではないかと思います。新市では今でも地下水を利用しています。夏冷たく冬あたたかく美味しい水です。水道は特に必要のないところが多いのです。もう少し、自然に生かされているということを見つめるべきです。

 

 2.、小口を重視、それが会社の方針

 

 8月に地元企業から2400枚の見積依頼が来ました。夢リミットが「夢パレット」商品で対応しました。リミットとしては既定の方針通り夢リミットの定価見積です。結果は夢リミットが一番安い価格でした。リミットは価格が高いと評判の中で、夢リミットは定価販売でも他社に大きく差をつけたので自信を持ちました。問題はその後です。他社は海外生産を条件に価格を夢リミットより下げてきました。夢リミットは最初の見積価格を維持しました。不毛な価格競争の結果、発注の決定が大変遅れ9月中旬になりました。それで夢リミットは航空便を使う場合は値上げを提示しました。逆に他社は価格をさらに下げてきました。結果として夢パレットには決定しませんでした。

 価格引上げの理由は、10月の繁忙期に1軒あたり30枚の注文だったら80軒のお得意先の注文をこなせます。リミットは小口のお客様を大事にしています。会社の特徴は何か。それを守り続ければ必ず信用がつくと思っています。それが方針というものです。

 

 3.枝葉を払い幹を看る

 

 私は最近会社の方針を考えるとき、難しく考えずに枝葉を取って幹は何かと考えます。そうすれば自然に流れが見えてくると何時も言っています。たとえばコンピューターの本には外国語があふれています。時には「てにをは」だけが日本語で単語はすべて外国語の文章もあります。語学が不得手では意味不明です。でもよく読んでみると簡単なことを難しく書いているだけのことも多いのです。難しい解説が解らなくても、目に付いた小さい問題点の解決に努力した積み重ねが大きなことの解決に結びつくのではないでしょうか。NEC本社のホームページにリミットが事例として載ったのも、専門的技術からではなく、無数の小さな問題点の解決が評価されたのだと思います。私の感覚では凄いソフトができたとは思っていません。リミットの歴史は商品が間に合わないと叱られる歴史でした。その解決に努力した結果です。中国生産安定の基も生産を軌道に乗せて叱られないようにするために必死で努力した結果です。叱られることを少なくしよう、お客様に喜んでもらおうと一つ一つ解決に努力し続けました。難しい理論より、小さな問題点の解決の積み重ねが大きな結果を生み出したと思っています。

 

 4.過渡期の情報システム時代のために

 

 そのインターネットでの在庫情報・受発注はもう完成しています。そして携帯電話のiモードでの在庫情報に続いて、iモードでの受発注システムも完成いたしました。そして商品を希望条件によって検索、提案して発注できるシステムも完成いたしました。今後限りなく使いやすいように研究し、提案方法を模索しなくてはと思っています。

 ところで従来のファックスでの在庫情報ですが、これに関してインターネット時代にファックス情報は必要ないのではないか、との考えもあります。現在の状況では過渡期ですのでインターネットを使われるお得意先は大変少ない状態です。そこで在庫情報、注文請書、出荷案内だけでなく、受注残状況、売掛残情報など事務的なコンピューターが持っているあらゆる情報を音声を使って案内し、選択してもらってファックスで情報提供することを考えています。お得意先の情報条件に合わして利用していただけばよいと思いシステムの構築に入っています。

 

 5.先達が哲学を若い世代に伝える

 

 いま紹介したインターネットシステムは若い世代が主導で構築しました。コンピューターが趣味だといっていた私は、過去の人になっていました。引退を真剣に考えているときに次のような内容の記事を読みました。

 米国シアトルのリーダーシップセミナーで古老の知恵をいかに活用するかが勝負の分かれ目という話が出てきます。コンピューターや「何々理論」で若い人が勝っているうちはよいのですが、突然大きな行き詰まりや破綻が見える。慌てて古老の知恵を借りてももう手遅れ。そういうことは結構多いのです。老いた人は若い人が知らない数字などでは表現できない知恵をいつも社会に提供することで生涯現役でいられるのではないでしょうか。若い人と年を取った人がどのように役割分担してひとつの社会や会社を作っていくか、という発想がこれから必要というのです。

 ベンチャービジネス最盛期の米国でのこの記事を読んで私は今後の私の生き方が明確に解りました。若い世代に財務や事務的なこと、企画、生産等全て任せても心配は不要です。私が長年経験して掴んだ哲学もある程度は理解していると思います。しかし自らの経験して実感として掴んではいません。昔は失敗をさせて教育するという方法がありましたが、今の時代は失敗をすれば回復困難な時代です。それだけに全て任せるのではなく、哲学の分野だけは絶えず話し合って理解させながら経験させることが大事な時代だと思います。

今後起きる原油価格暴騰によるインフレ、高金利アメリカでの株の暴落など深刻な不況を考えれば、今こそ若い世代と充分に話し合いながら失敗を防ぎ会社の存続に努力しなくてはと思っています。年老いた者も若い者も猛烈に勉強しながら、不透明の時代だけに静かに瞑想し今後の行き方を決定して行動を起こさなければならない大変難しい時になりました。

 

  2000年9月25日

   リミット株式会社

   代表取締役 有 木 伸 宏 

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