2000年 6月号

 

 一、お客の価値観で満足度を選んでいただく

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 現在、夏物も受注残の整理に入りました。今年度夏物の販売予測は五パーセントアップで生産計画をたてていました。しかし結果は夏物が十九パーセントアップになっていますので商品不足を起こしています。これをカバーするため航空便を利用して追いかけ生産をしております。追いかけ生産には国内に工場が必要です。リミットは現在約五千枚を国内生産致しております。中国生産と国内生産との工賃差は工場の赤字を含めると約千円になり、国内生産を中止すると年間六千万円生産経費が減少して利益が出ます。

そこで生産計画担当者に対して、工場を繁忙期の四ヶ月だけ動かして、八ヶ月は休業にして給与を五十パーセント保障にできないか、国内生産を千枚減少させて年間一千二百万円生産経費を減少させることができないかと色々と検討を求めています。国内生産の減少は全てお客様の満足度の低下に直結します。お客様の満足度を無視すれば年間六千万の利益になります。お客様の満足度を考えた生産計画が現在六千万円生産経費増になっているのです。

リミットはバブル崩壊以後現在までずっと値引き販売を致しておりません。値引き販売をすれば赤字になり倒産いたします。価格維持をしているからこそ、追いかけ生産での納品ができるのです。海外生産で安い価格だけれど在庫がなくなれば供給が途絶えるやり方と、価格はやや高いけれど追加生産ができるやり方の二つの方向をお客様自身の考え方で選べばよいと思うのです。メーカーとしての明確な特徴を出し、それに共鳴していただけるお客様のグループができればよいと思います。

 

 二、批判に耐えて教育と人材を確保

 

 リミットグループは各部門の教育研修費として年間約一千万円使っています。二十年前から今日を見越して頭脳分野への投資を続け、コンピューター等のリースと償却等がバブル時代は年間五千万円、今でも年間四千万円になっています。方針は赤字の年度でも転換しませんでした。しかもなかなか結果は出ませんでした。最近ようやく今まで投資した成果を実感できるようになりました。二十年間教育研修を続け、経営哲学に基づいて対応できる体制が最低限できたと感じています。

振り返ってみますと二十五年前、私は新市の工場で男の子一人を相手に裁断をしていました。優秀な人材は来てくれず苦労していました。現在は各部門に優秀な人材が入り素晴らしく成長しています。昨年、税務署が十五日調査しましたが追徴金はゼロでした。税務署がリミットの国際的な動き方が理解できず、勉強に時間がかかったのです。二年前には神戸税関の調査がありました。貿易担当の女子社員二名は初めての経験で、貿易経験の深い東京・夢リミット代表の立ち会いを申し出ました。それに対して私は、間違いがあれば教えてもらえばよい、何日でも来てもらって教えてもらいなさい。無料の研修になるのだからと言いました。結果は問題点を教えていただき、少しだけ追加の税金がありました。そして今年三月に調査があり、神戸税関に良くできていると誉められました。追加税金はゼロです。現在の社員を見ると、情のない冷たい社長と言われ続けながら社員の入れ替えに努力した結果だと思い、感無量です。

 

 三、ブランド・歴史・信念・哲学

 

 最近、インターネットビジネス時代では特徴のあるブランドを持っている会社が生き残ると耳にします。ブランドを成長させるのは簡単ではありません。逆に壊すことは瞬時です。歴史を作るのも年月が必要です。決められたことを頑固に守り続けなくてはなりません。このことは簡単なようで大変なことです。リミットがバブル崩壊以後も価格を維持してきたことは、精神的に大変な苦しみでした。継続してきたことは奇跡に近いことだと思います。他社が値引きをしたり、安い商品を売り出したり、新しい分野に進出したりと色々な情報が入ってきます。このような状況の中で価格維持をすることは頑固な信念と経営哲学が必要です。安売り専門の店なら問題ないのですが、そうではないのなら後から下げることは社長の信念が揺らいでいることを証明するものだと、コンサルタントから厳しく教えられました。この考え方を背景に価格維持をしてきたのです。

 

 四、新時代を拓く破壊と再構築

 

 インターネットビジネスはまだ明確には方向が見えませんが、間違いなくその時代が来ます。リミットも先月、この時代に備えて検索時間での対応が早い新機種を導入しました。しかしコンピューターを入れただけでは何もできません。今後のビジネスの方法が確立され、人間が行動を起こさなくては動きません。コンピューターはあくまでも人の補佐です。

リミットは全員行動を開始しました。研究所の企画担当もカタログに変わる画像の研究の結果を出しています。全ての情報を研究所に一本化して、企業内情報ネットワークでの共有化が始まりました。各分野でデータを持っていたときは、新しいデータに更新を忘れて失敗したことが多くありました。今は研究所が更新しますので、各所は最新の情報が入ります。通信の進歩で何処にいてもそれは可能です。販売店にも画像音声データ等を直接供給できるようになります。

一方今後の情報グループ化に備えて、私の努力で培ってきた銀行、商社、素材メーカーとの良好な関係を若い世代は、古い流れを壊して再構築するために取引を中止したりしています。一生懸命に努力して取引ができるようになったという私のよろこびを壊しています。

大変寂しい思いをするときもありますが、古い物を徹底的に壊し再構築が今、必要です。修整程度では間に合いません。私は遠慮せずに壊してもよいが、新しい流れを構築して、今までの流れより良くなるように意地でも結果を出せと言っています。

 

二〇〇〇年六月二十五日

リミット株式会社

代表取締役有木伸宏

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